~スマートエネルギーネットワークのさきがけ
ガスコージェネレーションシステムによるデマンドレスポンス~
電力不足を乗り切る新しい節電の
システムづくり
DEVELOPER INTERVIEW
開発者インタビュー
スマートエネルギーネットワークのさきがけ
ガスコージェネレーションシステムによるデマンドレスポンス
電力不足を乗り切る新しい節電の
システムづくり
昨今の電力不足の克服には節電が必要ですが、従来の節電スタイルでは消費者の生活パターンや経済活動に制限を伴ってしまいます。もっと持続可能な方法で電力不足を回避することはできないか。大阪ガスは、かねてから進行中の低炭素社会の実現に向けた「スマートエネルギーネットワーク」の実証事業に加え、ガスコージェネレーションシステムによるデマンドレスポンスのシステムの開発に取り組みました。この新たな節電システムの構築に企画から携わった3名の開発者が、運用のスタートまでを熱く語ります。
MEMBER
企画部
-
電力事業チーム 部長
久保田 泰基
企画部
-
エネルギー・電力
ソリューションチーム 係長
宮本 明則 -
エネルギー・電力
ソリューションチーム 係長
大澤 泰嗣
電気と熱のエネルギーの最適化を
めざすスマートエネルギーネットワーク
大阪ガスは、エネルギーを供給する事業者としての重要な役割のひとつである低炭素社会の実現に向けて、スマートエネルギーネットワークを推進しています。スマートエネルギーネットワークとは、天然ガスを利用したガスコージェネレーションを核とし、大規模電源や太陽光発電などの再生可能エネルギー、そしてお客さまを、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)でつないでコミュニティを形成する分散型エネルギーシステムのことです。このコミュニティ内のお客さまどうしで電気と熱の相互融通を行い、エネルギーをムダなく効率的に使う「エネルギーの高度利用」、太陽光や風力などの「自然エネルギーの導入促進」、さらに万一の電力不足や停電時にも重要機能を支える「エネルギーセキュリティの向上」をめざしています。
コミュニティ内の分散型電源の中心となるガスコージェネレーションは、ガスから電気と熱の2つのエネルギーを取り出せる高効率なシステム。必要な場所で、送られてきた天然ガスを電気エネルギーに変えることができるだけでなく、同時に発生する熱エネルギーも、冷暖房や蒸気・温水などでムダなく利用できます。熱は、お客さまが消費するエネルギーの最終的なカタチで50%以上を占めるにも関わらず、火力発電所などでは未利用となっていますが、ガスコージェネレーションを活用すれば利用可能です。そして、もうひとつの大きなメリットは、ガスコージェネレーションの調整力です。いま積極的に導入が進められている太陽光発電などの再生可能エネルギーとの協調運用にも、大いに貢献できると考えています。ガスコージェネレーションシステムは、多様なエネルギー問題解決のカギとなる特性を持っています。
大阪ガスでは、電気と熱のエネルギーにおける需要と供給のバランス安定化と最適化をめざして、2010年からスマートエネルギーネットワーク実証事業を開始し、さまざまな制御ロジックの構築やデータ取得を行っていました。その最中、3.11の東日本大震災が発生。日本全国の原子力発電所は稼働を大きく減少させました。結果、多くの日本人が予想もできなかった計画停電が実施され、電力不足が顕在化しました。そして、節電がクローズアップされ始めたのはご承知の通りです。このような状況から、大阪ガスでは、スマートエネルギーネットワークのコミュニティ内でエネルギーの需要と供給のバランス安定化を図るために取り組んでいたデマンドレスポンスの推進を一気に加速することにしたのです。
電気と熱のスマートエネルギーネットワーク
実証事業
節電を発電と同等の価値とする
「ネガワット」の概念
これまでの日本は、電力会社が計画的に発電所を準備して、需要に合わせて発電する仕組みでした。この仕組みによって日本の電力供給は安定していたので、夏の電力需要ピーク時にもそれほどの無理をして節電する必要はなかったのです。しかし昨今では、想定外の原子力発電所の稼働減少で、ピーク時では供給力にかなり厳しい状況が見込まれ、計画停電や使用制限に陥らないために、それぞれの力を合わせて節電する必要があります。
しかし、このような電力が不足する事態は、海外では一般的どころか日常的なことです。たとえば、アメリカの東海岸地域では、電力会社は自由化による厳しい競争にさらされています。そのため、需要に合わせて莫大なコストがかかる発電所を建設することが難しく、市場を通じて第三者から電力を購入する仕組みが生まれ発達しました。さらにもうひとつの発想が、発電を増やす代わりに需要を減らし、電力不足を緩和するというものです。この発想から、節電に発電と同じような価値をつけて電力会社が買い取る仕組みが生まれました。これがデマンドレスポンスと呼ばれる需給調整の仕組みです。デマンドレスポンスは、需要が供給力を上回りそうだと予想されたとき、市場などを通じて提示される価格に応じて、消費者が自発的に節電して需要を減らすことがポイン
一般的に電力はキロワットと呼ばれますが、消費者の節電による削減電力は、ネガティブなキロワットという意味からネガワットと呼ばれています。アメリカでは、このネガワットが証券取引のように時価で取引されます。つまり、供給できる電力が足りないときには、ネガワットに高値がつき、節電が促されることになります。
このデマンドレスポンスの仕組みは、電力不足に直面する現在の日本の状況の克服にも役立つのではないかと考え、2011年の秋にアメリカに渡りました。アメリカでは、電力事情の視察を行うとともに、デマンドレスポンス市場関係者とディスカッションを重ねました。この経験を通じて、日本でも実施可能な今回のデマンドレスポンスの仕組みの設計を固めることができたのです。
節電するエネルギーを
ガスコージェネレーションシステムで補完
かつての計画停電や電力使用制限のような強制的な節電では、お客さまの経済活動に大きな影響が出てしまいます。しかし、無理のない節電では電力量の大きな削減が期待できません。そこで、お客さまが所有するガスコージェネレーションで電気の自給自足率をアップし、「節電」と「いつもどおりの経済活動」を「両立」できるシステムづくりをめざしました。デマンドレスポンスは以前からの構想でありましたが、エネルギー会社としての社会的責任を果たしたいと急ピッチで進めたため、今回は、株式会社エネット(特定規模電気事業者、通称:新電力)の9企業のお客さまが間に合ったカタチでスタート。また、夏の電力需要ピーク時に余力のある学校や夜間営業がメインのお客さまに絞ってご提案し、参加していただいております。
この仕組みは、電力不足が見込まれると、エネットは発電所に増量要請を行い、そして大阪ガスはお客さまに節電要請を行います。その結果、エネットは発電増量に加え、お客さまの節電による電力使用量の削減で供給量を確保し、需給のアンバランスが緩和されるということです。実際には、天気情報等から電力需要予測が可能なので、数日前にWebの管理画面から価格を含めた応募開始情報を発信、自動的に各お客さまの各担当者のケータイやパソコンにメールが送信されます。それを受け、ガスコージェネレーションの追稼働が可能で、電力に余裕のあるお客さまが「節電参加します」とWeb上で宣言。その時間帯にお客さまが本来使用していたはずの電力量と実際の使用量との差を、ネガワットとして換算します。
このデマンドレスポンスのお客さまの参加料は、いまのところはゼロ。また、ネガワットへのインセンティブは、電力が不足したときに他の電力会社から買い上げてくるはずだった資金から調達しています。電力不足に馴染みがなかった日本において、節電をビジネスモデルとして構築することは、とにかく大変でした。しかし、このプログラムへの参加をお願いしたお客さまの反応はすこぶる良く、すぐに「協力しましょう!」とご理解いただき、とんとん拍子に話が進み、幸いでした。
お客さまの節電努力をリカバリーして、
納得できるシステムに
デマンドレスポンスに参加していただくためには、まず、お客さまの個々の電力使用量の基準値を決定する必要があります。これは、お客さまの電力使用量データのある過去の3日間の平均より算出するのですが、もしこの3日間に節電努力した日が含まれる場合は、その節電努力分をリカバリーして算出します。ここで、リカバリーすることはとても重要です。これをしないと基準値がどんどん低くなってしまい、お客さまの努力を正当に評価することができなくなってしまいます。私たちは、お客さまの節電への努力を汲み取ることが、お客さまが不満を感じることなく、持続可能な節電体制の構築につながると考えています。実感が伴わないものを基準とするため、努力して削減した量を正当にカウントしてくれるという公平感をお客さまにお持ちいただくことを大切にしています。
ビジネスモデルの構築にかなりの時間を要したため、2012年6月1日の運用開始に対するシステム開発に残された時間はわずかでした。とにかく時間がありません。すべてをやり替える方法が一番簡単ですが、莫大な時間と費用が必要となるし、なによりもお客さまにご迷惑をお掛けすることはできません。そこで、既存のシステムやインフラを組み合わせて流用することで、新規で開発すべき要素を減らすことを考えました。大阪ガスとエネット、また大阪ガスとお客さま間は、ICTでつながっており、それぞれ電力事業とガスコージェネレーション監視のシステムが構築されていたので、このネットワークを利用することにしました。お客さまデータの計測はガスコージェネレーション監視システムを、エネットとの情報のやり取りは電力事業用のシステムをそれぞれ流用。そして、デマンドレスポンスのシステムは両方のシステムに追加しました。稼働中のシステムに手を加えることは、システム全体に影響を及ぼす事態に陥り、大きな損失も生まれかねません。しかし、既存の両システムを開発し、いままでに何度も両システムの改造等を行った経験から無事に追加することに成功。予定通りのスタートが実現したのです。
コージェネレーションの運転変更の例
デマンドレスポンスで分散型エネルギー
社会実現を加速する
今回のデマンドレスポンスシステム開発では、大阪ガスがコミュニティ内をつなぐ役割を担いました。この取り組みのデータとノウハウを蓄積し情報発信を行うことで、いずれ国に制度化され、日本全体に拡がることを望んでいます。やがてアメリカのように新たなビジネスとして発展することも可能でしょう。将来、そして現在も、カギとなるのはデマンドレスポンスに参加するお客さまです。ガスコージェネレーションの追稼働や稼働時間増加によるデマンドレスポンス方式は、「節電」と「いつもどおりの経済活動」が「両立」できる仕組みですので、もっと社会的に評価されるべきだと思っています。「我慢する節電」から、新たな「持続可能な節電」への転換の始まりとして、ガスコージェネレーションを稼働させるお客さまのチカラが必要です。
ところで、このデマンドレスポンスのシステムは、当初からのスマートエネルギーネットワークのコンセプト・テーマの1つである「エネルギーセキュリティの向上」の実現でもあります。もちろん、当初の予定よりかなりスケジュールを前倒しし、苦労もしましたが、やはり2012年の夏に間に合わせる必要があったと確信しています。社会全体が、電力だけでなくエネルギー全体に注目している現在だからこそ、皆さまに、天然ガスによるガスコージェネレーションを中心とした、もっと「攻める姿勢」の分散型エネルギーシステムをご理解いただけるのではないか、分散型社会システム推進への弾みになるのではないかと思っています。エネルギーが足りないのは、日本だけではありません。いずれスマートエネルギーネットワークシステムを世界に誇れる日本のトップ技術にし、これがエネルギーの不足している世界各国で役立つことを願っています。
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