Daigas Group 大阪ガスグループは、Daigasグループへ。

Daigas Group 大阪ガスグループは、Daigasグループへ。

Future Report

探険!近未来の実験住宅

Future Report 探険!近未来の実験住宅

掲載日:2017.10.31

近未来の集合住宅を実験検証!?
「NEXT21」とは一体?

未来を変えるモノ&コトの最新情報を調査してお届けする“Future Report”。
今回キャッチしたのは、「近未来の集合住宅を社員たちが自ら実験検証している施設がある!?」という情報。
とあるデベロッパーの方に「本当は我々こそ手がけるべき実験を大阪ガスさんがやっている」と言わしめた、
建築業界では有名な建物らしい。
いったいどういうものなのか?さっそく現場を訪ねてみました。

都会の一角に突如現れた巨大な
ツリーハウス!?

実験集合住宅

「え!? 何コレ? 森?」 ビルやマンションが建ち並ぶ都会の一角に突如姿を現したのは、樹木と共生しているかのように緑に包まれた、あたりでは異彩を放つ建物。

「これが実験集合住宅・・・?」 建物の前でうろうろしていると、本日の案内役である志波さんが出迎えてくれました。

実験集合住宅

「どうぞ、ようこそ“NEXT21”へ!」
「こんにちは~。さっそくですが志波さん、なんか建物と森が一体化してるような外観なんですが」
「そうなんです。この建物は、環境共生住宅としての実証モデルになっておりまして、大規模建物緑化を実現しようとしているんです」

環境共生住宅? 大規模建物緑化? なんだか奥が深そうなキーワードが出てきたので、そもそもNEXT21とは何なのか、ひとまず詳しい話を伺うことにしました。

大阪ガス株式会社 リビング事業部 志波 徹

大阪ガス株式会社 リビング事業部 志波 徹

大学の教科書にも登場する
「環境共生住宅」モデル!

もう半世紀も前から!? しかもエネルギー会社である大阪ガスが!? 一体どういう狙いで?

志波さん

NEXT21は、近未来を想定した実験住宅です。10年、20年先の近未来において、家族の形態や暮らし方の移り変わりに伴い、住まいに求められるニーズはどう変わるのか、またそのニーズに応じて住宅やエネルギーはどうあるべきかを、実際に人が居住することで実験・検証しています。この建物ができたのは1993年ですが、実は大阪ガスでは1968年から、こうした実験住宅を建設して実証実験に取り組んでいます。

NEXT21って、いったい何なんですか?

志波さん

NEXT21における居住実験の意義は大きく3つあります。詳しくは、こちらの図をご覧ください。

NEXT21における居住実験の意義と成果

PHASE1 環境共生住宅としての実証モデル

大規模建物緑化の実現

環境に配慮した先進エネルギー・
設備システムの実証

省エネルギーを追求した住まい方の実証

PHASE2 スケルトン住宅・長期優良住宅ストックとしての実証モデル
PHASE2 スケルトン住宅・長期優良住宅ストックとしての実証モデル

少子高齢化社会に対応し、環境にやさしい
住宅の提案と住み方調査による検証

リフォームによる建築システムの検証

コミュニティ形成促進に関する実験

PHASE3 住宅機器・設備の実験とモニター評価の場
PHASE3 住宅機器・設備の実験とモニター評価の場
志波さん

1994年から、第1フェーズ、第2フェーズ、第3フェーズと進めてきて、現在は2013年からスタートした第4フェーズに入っています。「これからの住宅・エネルギーのあるべき姿はどのようなものか」を探り、提案することはNEXT21の変わらないテーマですが、第4フェーズ実験では、2020年頃の都市型集合住宅を前提として、「環境にやさしい心豊かな暮らし」を追求します。

なるほど。こんな実験住宅って他にもあるんですか?

志波さん

長期にわたって人が居住する実験住宅は、世界でもこのNEXT21だけです。その希少性から、学識者や企業の研究者の見学も多いですし、大学の建築学科で使われる教科書でも紹介されています。

すごいですね。ところで、実際に人が住んでいるってことですが、誰が住んでるんですか?

志波さん

大阪ガスの社員です。実験は5年で一区切りになっていて、その度に次回の入居者の募集をするのですが、だいたい入居希望者の方が多くてご自身のライフスタイルを書いていただいた応募シートを元に選考させていただいています。

実験住宅に住もうなんて酔狂な人がそんなにたくさん・・・?

志波さん

いや、人気の秘密は実際に見てもらえればわかりますよ。一般のマンションとはまるで違いますから。
さっそく見て回りましょうか。

屋上の緑地で育てているものとは?

屋上の緑地の様子
志波さん

まずは屋上からご案内します。

うわーっ。ちょっと草花が植えてある程度かと思ったら、樹木もある立派な緑地ですね。

志波さん

ここが屋上緑化スペースです。鳥もよく来るんですよ。北側には大阪城公園、南側には天王寺公園があって、ここはちょうどその中間に位置するため、公園間を飛んでいる鳥が、この屋上の緑を見つけて羽を休めていくというわけです。

なるほど。畑もありますね。

志波さん

ここは住民の皆さんが当番制で水やりをしながら、季節の野菜などを育てています。収穫したものはみんなでいただいたり。あとは、カブトムシの幼虫をこの緑地に放して、成虫になったところで子どもたちと一緒に捕まえたり。

この都会のど真ん中で!

志波さん

おもしろいでしょう? まあそれも、ただ単にイベントとして行っているわけではなくて、そういった活動を通じて入居者に緑地への興味を持ってもらおうというねらいがあるんです。そこから、生物の多様性の理解なども進めばいいなと。

緑地の横に設置してあるのは、エネルギー関連の装置ですか?

志波さん

エネファームと蓄電池が設置されています。屋根には太陽光発電パネルも装備していて、再生可能エネルギーも取り込みながら、集合住宅用のスマートエネルギーシステムの実験も行っています。

装置について説明する志波さん

時代が変われば家族も変わる、
住まいも変わる!

外階段の様子
志波さん

では下の階へ下りて行きましょうか。今日は気持ちのいい気候なので外階段を使いましょう。

これは共有スペースですか?なんか贅沢な使い方ですよね。

志波さん

通常の集合住宅ではまずあり得ない設計ですね。ここで1部屋分くらいのスペースがありますから。でも、こうして入居者同士が気軽にふれあえる場を共有スペースに設けておくことで、集合住宅でも「人と人のつながり」を生むことができます。これからの時代、必要となる要素だと考えています。さあ、こちらへ。渡り廊下を渡って行きましょう。

外階段の様子

全体が見渡せる・・・。住居全体で、他の入居者さんたちの気配を感じられるように工夫されているんですね。入居希望者が多い理由が少しずつわかってきました。で、肝心の居住スペースは一体どんな造りになっているんですか?

志波さん

一つ見学用に空けてある住戸がありますので、そちらをご覧いただきましょう。こちらの「303」号室です。「自立家族の家」という名前の住戸です。ここからお入りください。

303号室玄関

え? ここから? ここ、ベッドルームですよね?

志波さん

この住戸はちょっと変わってまして。家族4人それぞれが持つ個室が外とつながっていて、家族が集うリビングスペースは奥に設けられているんです。だから、玄関扉も各個室に1つずつと勝手口で合計5つ。

それ、変わりすぎでしょ!?

志波さん

中へどうぞ。こちらがリビングルームです。

リビングルームの写真

広いですねー。

志波さん

各個室とリビングルームとを隔てる壁は、実は可動式になっていて、上に引っ張り上げられるようになっています。自分の個室とリビングルームを、ひとつながりの空間にすることもできる仕掛けになっています。

へえ~、おもしろい。で、この住戸のテーマが確か「自立家族の家」だとか。

志波さん

そうです。個人のプライバシーを尊重する傾向にある昨今、家族は「人格を持った個人の集合」という意識も強くなってきています。そこで、住戸の主室と個室の関係を見直し、家族というつながりの関係と、自立した個人という相反する2つの関係が両立できるよう、新しいコモンスペースと個室や外界との空間の連結関係を提案しています。

部屋全体の図面

実験のねらいは何となくわかりましたが、しかしここまで変わってると住みづらそうだなあ・・・。

志波さん

NEXT21では、定期的に入居者からヒアリング調査を行っているのですが、実際、第一フェーズでこの住戸に住んでいた人の感想が記録に残っています。それによると、「プライベートな自分とパブリックな自分を切り換えることができる“変身空間”とも呼べる設計で気に入った。一般的な間取りの3LDKに住んでいた時よりも、かえって家族のコミュニケーションは増えた」とのことです。けっこう楽しんで住むことができたようですね。

自由すぎる設計・改修の秘密とは?

NEXT21の住戸って、まさかどれも玄関が4つあるわけじゃないですよね?

志波さん

もちろん違います(笑)。実はNEXT21の住戸は、どれも皆、そのコンセプトに応じて間取りや設計が違うんです。たとえば「403 しなやかな家」は、料理講習ができる家というコンセプトの住戸。キッチン横の全面窓を開けると、広い縁台にそのまま出られるようになっていて、そこでみんなで作った料理を食べることができる設計になっています。昔の家にあった縁側のよさを集合住宅の中で実現したプランです。

403住戸 しなやかな家

確かに、これはまた303とはまったく異なる間取りですね。

志波さん

あるいは、「501 プラスワンの家」は、「1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし」というコンセプトで、中央に設けられた土間をはさんで、「夫婦+単身の子」や「夫婦と高齢の親」などの「1.5世帯」が住めるように設計されています。時の流れとともに変化する「家族のあり方」に柔軟に対応できる住まいですね。

501住戸 プラスワンの家(写真中央のグレーの部分が土間)

中央に土間かあ・・・。あれ? でもこの資料を見ると、「プラスワンの家」は「第4フェーズの新しい取り組み」とありますね。
「501」は、以前はまったく違う設計の住戸だったということですか? 普通のマンションって、ここまで自由にリフォームできないですよ?

志波さん

それこそが、NEXT21の最大の特徴なんです。NEXT21は、向こう100年以上住み続けられる集合住宅として設計されました。100年ともなれば、その間、家族のありようや暮らし方も当然、変わります。住まいは、それに対応できるだけの柔軟性を備えていなければなりません。そこで、「スケルトン・インフィル方式」という建築システムを採用したのです。

「スケルトン・インフィル方式」???

志波さん

建物の骨組みをつくる構造躯体(スケルトン)と住戸内装(インフィル)を分離する方式です。NEXT21では、フェーズごとにテーマが異なり、住まいの提案内容も変わります。その度に、それに合わせて各住戸の間取りや設計もがらりと変える必要があります。このスケルトン・インフィル方式なら、躯体を傷つけることなく、住戸を自由に改修することができるというわけです。

なるほど、すごい仕組みですね。でも、水回りは?配管はどうなっているんです?

志波さん

その秘密はこちらを見てもらえればわかります。

スケルトン・インフィル方式について説明する志波さん

廊下の下に配管が!?

志波さん

そうなんです。共用廊下の下部を配管スペースとして利用することによって、通常のマンションでは不可能な、水回りの大幅な位置変更も可能になっています。マンションデベロッパーの方が見学に来られると、「とてもじゃないが、こんなコストのかかる設計にはできない」と苦笑いされますね。

未来の暮らし提案に向けて、
まだまだ実験は続く。

いろいろ見せてもらって、とてもおもしろかったです。
これからのNEXT21としては、どのようなビジョンを描いていますか?

志波さん

今後、ますます少子高齢化が進むと、家族の形態が変わるとともに省エネ水準も上がっていきます。大阪ガスとしても、それに対応する多様な住まいとエネルギー活用のあり方を提案していきたい。そのために、NEXT21の検証成果をしっかり活用していくことが重要だと考えています。

これからもぜひユニークな実験を続けてください。今日はありがとうございました!

SHARE

  • SHARE_Facebook
  • SHARE_X

TAG SEARCH

キーワードで探す