超省電力メタンセンサーによる
世界初の電池式家庭用ガス警報器の開発者を訪ねる!
掲載日:2017.11.06
なぜ「ぴこぴこ」を電池式に?
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今日は世界初の技術があると聞いて、やってきました。大西さん、野中さん、よろしくお願いします。
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うちらでもわかるように説明してや。
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わかりました(笑)
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えーと、大西さんと野中さんが携わった世界初の技術って何ですか?
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「ぴこぴこ」のどこが変わったん?
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電源コードがいらない電池式の「ぴこぴこ」になったんです。
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電池式? なぜ電池式にする必要があったんですか?
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都市ガスは空気より軽いので、家庭用ガス警報器は天井の近くに取り付ける必要があります。近年、換気扇もビルトイン化が進み、床付近の電源から配線を引いて「ぴこぴこ」を取り付けなければならないお家が増えたんです。
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わざわざ壁にコード這わせるぐらいやったら、「ぴこぴこ」つけたないわ。うち、こう見えてもミニマリストやねん。
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その気持ち、わかります。そのため、ガス警報器のコードレス化に着手しました。
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こちらを見てください。左が、従来のコンセント式。右が、今回開発した電池式。
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右の電池式は、内部に電池が入っているにもかかわらず、全体的に小さく、薄くなってますね。
計算ミスが大発見につながった?
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そやけど電池にするだけやったら、簡単ちゃうん? 電池で動くモノはいっぱいあるで。クルマも電池で動く時代や。かなり遅れてるんちゃうか。
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ジー子さん、単に電気の供給方式を変えればいい、そんな簡単なものじゃなかったようですよ。
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警報器を電池の入れ替えなしに何年も動かすには、消費電力を大幅に抑える必要があります。なんと電源コードのものより、消費電力をおよそ1/1000ぐらいの超省電力化にしなければならなかったのです。
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1/1000に!?
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そうです。警報器で最も電力を消費するのは、心臓部であるセンサーですから、このセンサーの超省電力化を実現するため、より小さく薄くする「薄膜化」が求められました。
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その「ハクマクカ」とかいうのが難しかったんやな。
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はい。大阪ガスとともに、国内外の大手半導体メーカーなど、さまざまなメーカーがガスセンサーの薄膜化に取り組みました。しかし、どこも成功しなかったんですよ。長い間「夢の技術」だと言われてたんです。
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そんなに大変な開発だったんですね。
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当社も一時は研究開発を断念しそうになったことがあるんです。ところでジー子ちゃん、都市ガスの主な成分って知っていますか?
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知らんわ。うちネコやで。むつかしいこと聞かんといて。
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ジー子さんは、都合が悪くなるとネコ主張するんですよね。えーと、都市ガスの主成分は確かメタンガスですよね。
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オー太くん、ご名答! 都市ガスに含まれる成分の約90%がメタンガスです。そもそもメタンは、センサー検知が難しいもので、私たちはセンサーを薄膜化する中で、メタンを感知する能力を高めることにとても苦労しました。
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でも最終的には成功してるやん。何でうまくいったん?
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それは本当に偶然だったんです。実験を続けていたある日、圧力換算ミスをしてしまい、アルゴンガスを過剰に注入してできた薄膜があったんです。そのまちがった条件でつくられた薄膜を捨てずに性能を測ってみたところ、メタンに対する感度が非常に高かったんです。
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まさにセレンディピティですね。
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その舌噛みそうなセレン・・・ナントカって、なに?
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セレンディピティは、思いがけないものを偶然に発見することです。地道な努力と長い時間が求められる研究開発で、ふとしたきっかけが大発見につながることがあるんです。
世界中の警報器を電池式に!
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実はセレンディピティは、もうひとつあったんですよ。
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またミスしたってこと?! おたくら大丈夫かいな。
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大丈夫でした(笑)。センサーには触媒を用いて、検知対象以外の成分を出来るだけ取り除く仕組みがあります。触媒は、複数の材料を混ぜたものを炉の中で数百度という高熱で焼き、合成して作るのですが、ある時、誤って百数十度も高い温度で焼いてしまったんです。これも捨てずに性能を測ってみたところ、画期的な触媒だということがわかったんです。
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その触媒の働きとは?
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その触媒はメタンのみを選択的に透過できるのです。この触媒の発見で、メタンのみを検知するセンサーを開発することができました。
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研究開発って、いろいろ遠回りせなあかんねんなー。うちそんなめんどくさいこと嫌やわ。
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そうなんです(笑)。でもこうした「偶然の発見」が、世界初の薄膜を用いた警報器用センサー技術の開発の近道になりました。
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この小さい中に世界初の技術が詰まっているんです。メタンのみを検知するという極めて高い感度を備えた世界最小レベルのセンサーです。小型化による超省電力化、それでいて信頼性は抜群ということで、今後は、他のものにも応用が期待されています。
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聞けば聞くほどすごいセンサーですね。そして、そのセンサーのおかげで電池式家庭用ガス警報器「ぴこぴこ」が誕生したんですね。
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センサーのおかげというより、セレンなんとかのおかげやろ。
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確かに(笑)。でも、本当におかげさまで各界から評価されて、賞をいただいているんです! 公益社団法人電気化学会の「平成28年度技術賞(棚橋賞)」に、公益社団法人日本化学会の「平成28年度化学技術賞」、それに・・・。
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いや、しょうもない自慢話やったら、うちは聞かへんで。新しい「ぴこぴこ」は付けたるけど。
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ぜひ。今後はいろいろなガスを検知できるこのセンサーを他の用途にも活かしていきたいと考えています。
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それはすごいですねー。
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話の腰折って悪いねんけど、そろそろ帰らせてーな。近所のパトロールもせなあかんし、うち忙しいねん。
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わかりました! 今日はお忙しいところ(笑)、ありがとうございました。
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