Document Story
Interview Report 現場を強くするデータサイエンティスト集団
掲載日:2018.03.28
データ分析の専門組織
ビジネスアナリシスセンターとは!?
近年、盛んにメディアを賑わせる「ビッグデータ」や「AI」といったワード。
AI等を駆使してビッグデータを分析する「データサイエンティスト」の存在も脚光を浴びています。
しかし大阪ガスには、そのはるか前の1990年代後半から、すでにデータ分析を専門に手がける組織がありました。
それが、ビジネスアナリシスセンター(※)です。
当センターは、自社のビジネスに貢献するデータ分析専門組織としての機能を評価され、
2015年に企業情報化協会から「IT総合賞」を受賞。
情報化促進貢献個人等表彰では「経済産業大臣賞」を受賞。
また前所長を務めた河本は、日経情報ストラテジーが選出する
「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者でもあります。
今や企業内データ分析専門組織では、右に出る者のいない存在ともいえる大阪ガスのビジネスアナリシスセンター。
果たして、どのような組織なのか。
※発足当初は「データ分析専門チーム」。
「見つける」「解く」「使わせる」の
3ステップで、社内の課題を解決。
ビジネスアナリシスセンターは、20年近い歴史を持っているそうですね?
-
そうなんです。当時は研究所所属の「データ分析専門チーム」という組織で、主にガス事業を営む上で必要になるガス消費量の予測にフォーカスして分析業務を行っていました。そのうち、そこで培った統計解析力を違う分野でも活かすことができないかという話になり、メンバーを増強しながら少しずつ業務領域を広げていき現在に至ります。
データ分析の専門組織ということですが、一体何をしているのでしょうか?
-
わかりづらいですよね(笑)。私たちのミッションは、「データと分析力によりイノベーションを起こす」ことです。ただ分析して終わりというのではなく、業務改革の機会を生み出し、社内にイノベーションを起こすことが大切だと考えています。
具体的にはどのように?
-
ステップは大きく3つに分けれます。大阪ガスにはさまざまな事業部がありますが、まずは各事業部で抱えているビジネス課題を「見つける」こと。次にデータ分析によって問題を「解く」こと。最後に、データ分析で得られた知見を「使わせる」こと。この3ステップを、事業部と二人三脚で進めています。
社外から仕事を受けるわけではないんですね。
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それはありません。ビジネスアナリシスセンターはあくまでも企業内分析組織として、Daigasグループに貢献するために活動を行っています。
-
大阪ガスにはスポンサーシップ制度があり、私たちはその制度のもとで業務を進めています。いわばスポンサーである各事業部門から予算をもらって分析業務を請け負い、成果物として分析結果を提供するイメージです。
社内の各事業部門が、お金を出す顧客という位置づけだと。
-
その通りです。予算を割いている以上、各事業部門も「良い分析結果だね」だけでは終われません。それを事業の売上アップや業務効率向上に役立てる必要が出てきます。スポンサーシップ制度は、データ分析を担当者の自己満足に終わらせない良い仕組みだといえます。
無い無い尽くしの状態から、
地道な仕事を重ねて信用度をアップ。
「役立てる」ことに成功した好事例をいくつか教えてください。
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大阪ガスでは、お客さまサービスの一環で業務用車両を運用していますが、自動車メーカーが保有するプローブカーデータから得た渋滞情報を用いて、どこにどのように車両を配置すべきかを分析しました。これにより、お客さまのところに短時間で駆けつけることができる車両配置を実現し、サービス向上に貢献しました。
-
もう一例挙げましょう。ご家庭で使われているガス給湯器が故障した際に、お客様からどのような電話連絡があり、その際に何の部品を用いて修理をしたかの実績データを分析することで、お客様のお問い合わせ内容からどの部品が故障しているかを予測する知見を導き出しました。それにより、メンテナンス担当がその予測に基づき、あらかじめ取替部品を持参してお客さま先を訪問することができるようになりました。今では再訪問が低減し、現場のメンテナンス業務がスムーズに進むようになっています。
車両配置に、給湯器の故障対応。それぞれまったく異なる分析テーマですね。
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そこが苦労するところです。事業部はその業務の専門家で、私たちはデータ分析の専門家。コミュニケーションが不十分だと、認識のズレや勘違いなどが生じて、最悪の場合、分析業務が振り出しに戻ってしまいます。そのため、現場でどのような業務を行っているかを入念にヒアリングした上で、適切なデータ分析と、それをどう役立てるかのゴールをしっかりイメージするようにしています。
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それでも分析が的を射ていないということが起こってしまうので、少し作業を進めては事業部側に報告をし、必要に応じて頻繁に打ち合わせを行うよう努めています。
事業部にとっては、自分たちの業務を改善してくれる良きブレーンのような存在だと感じました。
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今だからこそ、そうとらえてもらっているところもありますが、組織発足当時はまるで違いました。センター自体が知られていない、社内人脈もない、提案しても刺さらない、信用もない・・・、文字通り無い無い尽くしです(苦笑)。
その状況からどのようにして?
-
とにかく地道な仕事を重ねることによって、データ分析そのものとセンターに対する信用度アップに努めました。そして最終的に「役立つ」ということには徹底してこだわり、とことん追求しました。事業部とのコミュニケーションを活発に行うことで「人と人」の距離を縮め、事業部の業務内容を知ることに必死に取り組むことによって理解も深まりました。その結果として、信用も生まれたのだと思っています。
「データ分析力」を、会社の競争力を
測るコンピテンシーの一つに。
今は社内外から注目されています。
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そもそもデータ分析を専門に手がける社内組織そのものが珍しいわけですが、私たちはビッグデータというワードがもてはやされるずっと以前から存在しています。そうしているうちに時代の潮流がやってきました。「データ分析が会社の役に立つぞ」と。しかし、そう簡単な話ではありません。AIなど難しい分析手法を使えばうまくいくかといえば、決してそうではない。発足当時からこれまで18年間にわたって試行錯誤を続けてきたアドバンテージこそ、私たちの強みだと思っています。センターがうまく機能している要因の半分は、18年も前にデータ分析組織を作ったという大阪ガスの進取の気性であり、残り半分は、会社も私たちも粘り強く取り組んだことだといえるのではないでしょうか。
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長年にわたって根気強くやってきたことで、社内から「こいつらおもろいやつらやな」とか、「あいつらに相談すると何か解決してくれるんじゃないか」などと思ってもらえる人を社内に作れるようになってきました。そしてその人が異動して別の事業部に移ると、そこでまた別件を相談してくれるようになります。こうして、センターの活動を支持し、期待してくれる「ファン」層を形成できたことが大きいですね。とはいえ今でも分析業務の半分以上は、私たちの方から「こんな分析でこんなことを実現しませんか?」という「おせっかい」アプローチから始まっています(笑)。
ビジネスアナリシスセンターの今後のビジョンについて教えてください。
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正直言うと、データ分析組織なんて会社になくても困らないんです。そんな組織が存続していること自体、すごいことだと考えています。この18年間は、必然的な存在意義がない組織の必要性を生み出す18年間だったといえるでしょう。しかしここまできたからには、さらに先を目指します。これからは「データ分析力」が、「ブランド力」や「顧客数」といった会社の競争力を測るコンピテンシーの一つに挙げられるところまで、その価値を高めていきたいと考えています。
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現状維持は成長ではありませんからね。メンバー全員が、高い挑戦意欲を持ち続けることによって、データ分析をさらに高いステージへと押し上げたいと思います。
ありがとうございました。
プロフィール
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ビジネスアナリシスセンター前所長
(現 滋賀大学 データサイエンス学部 教授)河本 薫
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情報通信部
ビジネスアナリシスセンター所長岡村 智仁
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