Interview Report
独創的アプリを生んだ
新規事業創造プログラム
掲載日:2020.04.28
若手社員の
「こんなのあったらいいな」を
新たな事業に結実させる仕組み
Daigasグループでは、2018年よりイノベーション本部を設置し、
これまでの枠を超えた新たな価値創造を強力に推進しています。その活動の一つが、「TORCH(トーチ)」。
「115年の灯火を受け取り、次の100年の灯をともす」を合言葉に、
若手社員による新規事業創造プログラムを展開しています。
2020年2月には、そこから生まれた新規事業第一号として、“気分転換ネタ”集合アプリ「ラムネ」をリリースしました。
若手社員の想いをしっかりかたちにするイノベーティブなチャレンジを、「ENTERPRISE FUTURE」編集部が取材しました。
TORCHから、毎年、新規事業の種が誕生。
まず「TORCH」について教えてください。
- 川本
-
TORCHは、新規事業のアイデアを創出するプログラムです。参加者は、35歳以下の若手社員。若者の中にある「新しいものを生み出したい」という想いの炎を引き出し、それを大阪ガスの炎としてつなげようという意味を込めて、プログラムの名称を「TORCH」としました。通常業務から離れ、組織の枠を飛び越えてまったく新しい試みにチャレンジできる場として設計しています。
プログラムではどのような活動を行っているのですか?
- 川本
-
TORCHプログラムは2017年にスタートし、2018年、2019年とこれまで3回行っています。毎年、35歳以下の若手社員という条件で20名前後を社内で公募し、参加者の皆さんにはワークショップを通じてビジネスのつくり方を学びながら、チームで新規事業のアイデアを考えてもらいます。そして最後に、社内コンテストというかたちで各チームに新規事業アイデアをプレゼンしてもらい、良いアイデアを選抜し、その事業化を進めていくという流れです。
年を重ねるごとに、アイデアを創出するスキルを持った社員がどんどん増えていくということですね。
- 川本
-
そうですね。それもTORCHのねらいの一つです。参加する社員の部署や業務や経験値はさまざま。このプログラムを受講した社員のアイデアが、たとえコンテストで受賞アイデアに選ばれなくても、そのマインドを持ってそれぞれの業務に取り組んだり、TORCHを通じた共通言語で社員が有機的に繋がっていくことにより、イノベーションが生まれやすい社内風土の醸成にも一役買っていると思います。
実際にTORCHから毎年、会社として事業化できるアイデアは生まれているのですか?
- 川本
-
はい。2017年度のコンテストでグランプリに選ばれたアイデアは気分転換をテーマにしたスマホアプリだったのですが、「ラムネ」という名称で2020年2月にすでにリリースされています。さらに2018年度、2019年度の受賞アイデアも、事業化に向けて準備を進めているところです。
富田さんは「ラムネ」のアイデアを立案したチームのメンバーだったとか。
- 富田
-
その通りです。2017年にTORCHに参加したときは、技術系社員として、スマホアプリとは何の関係もないエンジニアリングの仕事をしていました。その翌年、イノベーション推進部に異動し、自身のアイデアの事業化とTORCHの運営に携わることになりました。
参加者の目線を持ちつつ、運営として支えてきたんですね。3年間、TORCHに携わってみていかがですか?
- 富田
-
良いアイデアを参加者から引き出し、またそれをいかに事業化していくか…、その難しさを運営側として痛感しています。プログラムの内容もこの3年間、試行錯誤して少しずつ変えてきてはいますが、まだまだ良くしていきたいと思っています。参加者の多くは、「新しいものをつくり出してこれからの大阪ガスを支えていきたい」と考えている若手社員です。そういう人たちと一緒に、TORCH事務局の一員としてプログラムに取り組めるのは、とても幸せなことだと感じています。
生み落とされたTORCH発第一号ビジネス
「ラムネ」。
TORCH創出ビジネス第一号の「ラムネ」とは、どのようなアプリですか?
- 富田
-
ひとことで言うと、マンネリ化した日常を少し楽しくする気分転換のためのヒント「ゆるネタ」を閲覧・投稿するアプリです。「気分スイッチ」機能があり、今の気分に合わせてゆるネタを楽しむことができ、フォロー関係にとらわれないゆるいコミュニティーを形成します。「自分の周りにいる人を日常生活の中で笑顔にしたい」という想いから考え続け、このようなアプリになりました。
ほぼ当初の構想通りというところでしょうか?
- 富田
-
それが実を言うと、アプリのネーミングも世界観もデザインも当初とは違うものなんです。「自分の周りにいる人を日常生活の中で笑顔にしたい」というテーマこそ変わりませんが、ブラッシュアップを重ねる中で、より「求められるもの」へと姿を変えていきました。
なるほど。いろいろ苦労があったようですね。
- 富田
-
何事も楽しめるタイプなので、あまり苦労は感じなかったのですが・・・(笑)。あえて言うなら、何が正解かわからない中で、決断をし続けなければならなかったのが難しかったです。たとえば、開発段階ではユーザーの意見を聞いて設計の参考にするプロセスがあるのですが、ユーザー10人がそれぞればらばらのことを言ったとき、どの意見を重視して、どのように設計に反映するかは、最終的に私に委ねられました。難しい決断でしたが、まずは自分の想いと直感を大切にし、あとは発案チームのメンバーや、アドバイスをもらっている社外メンターの意見も聞きながら決めていきました。
リリース後のラムネの反響はいかがですか?
- 富田
-
インストール数も反響も予想以上に大きかったことに驚いています。うれしかったのは、「いいアプリだね」という声が多かったことですね。現在のダウンロード数はリリース1カ月で1,000ほどですが、将来的には10万以上を目指しています。まずはサービスの質を高めることを最優先にしつつ、それだけ多くの方に利用して頂くくために、プロモーションなどのテコ入れもしていく予定です。その先に、収益の見込める事業へと発展させていきたいと考えています。
自ら発案、自ら事業化、自ら育成。
TORCHプログラムの第1回グランプリに選ばれたラムネが晴れてかたちになったわけですが、その次に事業化される案件はもう決まっているのですか?
- 川本
-
詳しくはお話しできませんが、ラムネと同様にこれまでDaigasグループが手がけたことのないものを事業化します。2019年度からは、グランプリに選ばれたチームのメンバーは、希望すればイノベーション推進部に異動して、富田のように自ら事業化に取り組める仕組みもつくりました。これで本当に、発案から事業化、さらにはその育成まで、一貫して自分で手がけることができる環境が整ったことになります。
ますますやりがいがありますね。しかし、まったく手がけたことのないビジネスとなると、他社との協業も求められるのでは?
- 川本
-
そもそもTORCHプログラム自身、クリエイティブ・カンパニーのロフトワークさんにコーディネートをお願いしており、そこに大阪ガスの行動観察の手法を採り入れてスタートしたものです。さらに、コンテストの審査員の過半数は社外の方にお願いしています。社員の「新しいものをつくりたい」という想いを、社外のプロフェッショナルの方々とうまくコラボレーションしながら、事業というかたちにしていくのがTORCHだと思っています。
- 富田
-
ラムネに関しても、アプリを開発していく中で、社外のさまざまな方にご協力いただきました。また、TORCHのアイデアを出すフェーズでも、いろいろな業界の方に社外メンターとして入っていただくことによって、多彩なアイデアが生まれ、その質も高まると考えています。今後も引きつづき、アイデア創出、事業化の両面でぜひ社外の方とのコラボレーションを行っていきたいです。
最後にこれからのTORCHプログラムの展望をお聞かせください。
- 川本
-
できるだけ多様化を進めたいと考えています。これまで参加が少ない女性社員を増やしたり、関係会社の社員も募集対象にしたりなど、いろいろ考えているところです。
- 富田
-
今は、TORCHから出てきたアイデアが、芽を出し、事業化が進み、社内外から注目を浴び、それを見た若手がさらに大きなアイデアを生み出していく、そんな好循環を生み出していきたいと思っています。将来的には、プログラムというかたちではなく、シリコンバレーのように、日常的に社員が自由にアイデアを出しあい、良いものを事業化していくことを目指したいです。
ありがとうございました。
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ビジネスインキュベーションチーム
マネジャー川本 将則
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イノベーション推進部
ビジネスインキュベーションチーム
富田 翔
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