日本の再生可能エネルギーの未来 日本の再生可能エネルギーの未来

大阪ガス(株)再生可能エネルギー開発部

上田 芳彦

日本は2030年度までに温室効果ガスの排出を46%減らす目標を掲げました。また、エネルギー全体の内、再生可能エネルギーの比率を現状の倍の水準にする「第6次エネルギー基本計画」がまもなく閣議決定される見通しです。日本の地形や気候に適した再生可能エネルギーは何か、未来を見据えた際にどこに大きな可能性があるのか、Daigasグループで再生可能エネルギーの開発に取り組む上田芳彦さんに話を聞きました。

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01

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再生可能エネルギー
の現在位置

再生可能エネルギーの現在位置 再生可能エネルギーの現在位置

-Daigasグループの再生可能エネルギーの取り組みについて教えてください。

上田実はDaigasグループは、2000年頃からエネルギー事業者としていち早く、再生可能エネルギーの開発を行ってきました。これまでに、建設中の案件などを含めると、約120万kWの再生可能エネルギー電源の開発・調達を行っており、これは大型火力発電所や原子力発電所1基分に相当する発電量です。将来のカーボンニュートラル社会を見据えた、エネルギー事業者としての取り組みです。

Daigasグループ 再生可能エネルギーマップ(2021年8月末時点)

-どのような業務に携わっているのですか。

上田Daigasグループが手がける再生可能エネルギー開発に携わっています。私は祖父が環境問題にフォーカスした新聞記事を書いていた関係で小さいころから環境問題に興味を持ち、大学では電気電子工学を学び、太陽光パネルの高効率化にもつながる研究を行っていました。就職の際はエネルギー会社からエネルギー変革を行うほうが大きな環境貢献ができるのではと考え、当時からさまざまな種類の再生可能エネルギーの普及に取り組んでいた大阪ガスに入社しました。入社後はまず大型天然ガス火力発電所に勤務し、発電所の詳細な仕組みを現場で学びました。その後、電力トレーディングや電力市場の分析などを担当し、それらの業務を通じて電力ビジネス全般の知識を身につけました。入社以来、一貫して電力事業全般に携わってきた経験が現在の再生可能エネルギーの開発に役立っています。

上田 芳彦 上田 芳彦

-日本の再生可能エネルギーが置かれている状況を教えてください。

上田今後、さらに再生可能エネルギー比率を高める必要があり、そのためには日本の地形、環境を踏まえ様々な電源種の開発推進が必要と考えられています。日本は山林が多く平らな土地の確保が難しいなど再エネ開発において難しい点もありますが、国土が海に囲まれていること、国産木材、地熱などを利用することで再エネ開発のポテンシャルを拡大していくことが可能です。そういった意味で、いずれかの分野に特化するのではなく、それぞれの分野において可能性を追求している段階と言えると思います。

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中小型へシフトする太陽光発電 中小型へシフトする太陽光発電

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中小型へシフトする
太陽光発電

-再生可能エネルギーには多くの電源種があります。まずは太陽光発電の現在の状況をお聞かせください。

上田太陽光発電はここ10年ほどの間で日本でも一般的になり、各地に大型のメガソーラー施設が誕生しました。太陽光パネルを1箇所にできるだけ多く敷き詰めた方がコストメリットは得られます。しかしながら、日本国内でメガソーラーに適した場所はすでに少なくなっており、大幅なメガソーラーの増設は難しい状況です。そうした中、今後は中小型太陽光発電所が増えていくのではないかと考えています。

-中小型の太陽光発電を増やすためにどのような取り組みが必要なのでしょうか?

上田太陽光発電の良いところは、工場の屋根やちょっとした空き地など、日照が確保できれば場所を選ばず設置できることです。そのメリットを最大限に活かすため、Daigasグループでは中小型太陽光発電所の開発を得意とする会社とアライアンスを組み、スピーディーに共同開発を進めようとしています。またグループ会社のDaigasエナジー㈱では、工場などを持つ事業者さま向けに初期費用をかけずに太陽光発電システムが導入できるD-Solar事業をスタートしています。お客さまが太陽光発電をより導入しやすい環境を作ることが重要と考えています。

ソーラー発電風景
酉島第二太陽光発電所

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早期導入が期待される
洋上風力発電

早期導入が期待される洋上風力発電 早期導入が期待される洋上風力発電

-次に風力発電の現在の状況と可能性についてお聞かせください。

上田風力発電もまた世界中で開発が進められている再生可能エネルギーであり、特に欧州で普及が進んでいます。日本は山が多い地形のため、風向きや風量の変化が大きく、陸上風力は設置にあたって地形を選びます。一方で海の上に風車を設置する洋上風力は地形の影響を受けにくく、発電に必要な風を安定的に得られることや大規模化しやすいメリットがあり、海に囲まれた日本に適した発電手法だと考えられています。そのため、日本では、洋上風力発電が将来の主力電源の1つと位置付けられています。

-洋上風力発電の導入に向けて、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

上田陸上と海上では設置環境が大きく異なるため、海洋環境への影響の調査や海上設備の設計・工事といった技術が必要です。Daigasグループは、2004年から陸上風力に参画し、今では10か所近い発電所を保有する国内有数の事業者です。そこで培ったノウハウも活用し、現在、複数の洋上風力発電プロジェクトに参画しています。
そのうちの一つとして、秋田県の秋田市の北側に位置する潟上市の沖合に、30基程度の風車を設置した最大出力40万kWの発電所をパートナー企業とともに計画検討しています。現在は洋上風力を設置することによる海洋環境への影響調査等を進めています。
また、今年の6月にパートナー企業とともに、再エネ海域利用法に基づく国内初の事業者に選定された長崎県五島市沖のプロジェクトでは、「浮体式」と呼ばれる風力発電機を採用する国内の商業利用では初めてのウィンドファームを建設する予定です。海の上に風車を浮かべる仕組みの設置方法であり、計画通り完成させ、洋上風力による電力を皆様に供給できるよう取り組んでいきます。

風力発電風景

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バイオマス発電の更なる拡大 バイオマス発電の更なる拡大

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バイオマス発電の
更なる拡大

-バイオマス発電の現状についてお聞かせください。

上田バイオマス発電は、植物由来の木屑等を燃料とし、これを燃焼しボイラで発生させた蒸気でタービンを回して発電を行うものです。植物の成長から発電所での消費までの過程で二酸化炭素排出量が増加しないクリーンな発電方式です。バイオマス発電の長所として、天候や風の影響を受けにくく安定して発電できる点が挙げられます。Daigasグループは、天然ガスによる火力発電所を運営してきた技術を活用し、バイオマス発電所の建設・運営にもいち早く取り組んでいます。

-バイオマス発電の普及に向けて、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

上田バイオマス発電において重要な要素の1つが、燃料の確保です。安定的かつ低廉に調達するために、これまでは海外から輸入されるケースが一般的でしたが、Daigasグループは純国産で未利用のエネルギーである間伐材に着目しました。エネルギーの地産地消を目指した取り組みとして、パートナー企業とともに2019年に㈱グリーンパワーフュエルという国産材燃料調達を業務とする企業を設立し、燃料確保の課題を解決することができました。未利用の間伐材や大量の木質ペレット等の燃料は、その保管や管理方法にもノウハウが求められますが、林業と木質バイオマス燃料に精通する2社と共同設立したグリーンパワーフュエルが、今後は国内のバイオマス発電所に燃料を供給していく予定です。その第1号案件が現在姫路市に建設中の広畑バイオマス発電所で、2023年の稼働を目指しています。

バイオマス発電所 バイオマス発電所
市原バイオマス発電所

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ポテンシャルを秘めた地熱発電 ポテンシャルを秘めた地熱発電

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ポテンシャルを秘めた
地熱発電

-地熱発電の現在の状況と可能性についてお聞かせください。

上田地熱発電は、地下深部のマグマの熱で高温となった蒸気を取り出して、タービンを回転させ発電を行うもので、気象条件の影響を受けにくい安定した発電方式です。地熱発電は古くから稼働しているものもあり、稼働率も高いためエネルギー資源に恵まれず、火山の多い日本とっては開発価値の高いエネルギーと考えられています。一方、適地を調べるボーリング調査などに年月と労力を要するため、地熱発電が成功している国では、政府がリーダーシップをとって調査に関するガイドラインを決めサポートしていることが多い状況です。

-地熱発電の普及のために、Daigasグループではどのような取り組みを行っているのでしょうか?

上田Daigasグループでは、栃木県日光市の川俣温泉、長野県のフスブリ山地域において、地熱開発の可能性調査に取り組むなど、現在複数の地熱発電のプロジェクトの検討を進めています。

図表:電源種別のメリットと課題

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Daigasグループの挑戦 Daigasグループの挑戦

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Daigasグループ
の挑戦

-Daigasグループでは、再生可能エネルギーに関して、どのような目標を掲げて取り組んでいるのでしょうか?

上田Daigasグループでは、今後も新たなプロジェクトに参画し、2030年度までに国内外で500万kWの再エネ電源の普及に貢献し、国内電力事業における再生可能エネルギー比率を50%にする目標を掲げています。電源の種類によっても異なりますが、500万kWとはおおよそ300万〜400万件のご家庭の電力を賄える発電量に相当します。非常に大きな目標であり、そのためには、様々な種類の電源の開発が必要です。様々な電源種を組み合わせることにより、天候や風の影響を受ける再生可能エネルギーの弱点を補うこともできるため、従来から取り組んでいる太陽光、陸上風力、バイオマスに加えて、洋上風力、地熱などの電源開発にも取り組んでいきます。

Daigasグループの再生可能エネルギーの開発・調達状況

-ガスを販売してきた会社が再生可能エネルギーに取り組む意義はどこにあるのでしょうか。

上田Daigasグループは、ガスだけではなく電力販売にも古くから取り組んできており、現在は、150万件を超えるお客さまへ電力を供給しています。また、お客さまに供給する電力は自社の天然ガス火力発電所、再生可能エネルギー発電所等を中心に調達しており、かつ発電された電気をお客さまの需要・ニーズに沿って供給しています。この発電から販売まで一貫したビジネスモデル・知見を活用することで、再生可能エネルギーの普及貢献促進や、お客さまのニーズに沿った再生可能エネルギー開発が可能と考えています。

私にとっての挑戦とは 目標を同じくする他者と共創してプロジェクトを成功に導き、『オールジャパン』の精神で再生可能エネルギーを普及していくこと

私にとっての挑戦とは

目標を同じくする他者と共創してプロジェクトを成功に導き、『オールジャパン』の精神で再生可能エネルギーを普及していくこと
上田 芳彦

再生可能エネルギーの開発には、Daigasグループ以外のパートナー企業、地域住民の方々との協業が不可欠です。そこで最近は、大阪ガスに所属する自分一人の枠を超えて、より多くの人にこの分野に興味を持ってもらい、再エネの普及に協力し合える人を増やしていきたいと思うようになりました。他社とアライアンスを組むことで、気づきも学びも大きく得られ、1社では不可能なことも実現できます。最初は会社と会社の関係で始まっても、最後は人と人との信頼関係です。再生可能エネルギーの開発は今後、何十年と続くものです。関係する全員がWin-Winの関係にならなければ長続きはしません。これからもさまざまな業種の人々を巻き込みながら、「オールジャパン」の精神で日本の再生可能エネルギー普及の取り組みを加速させたいと思います。

大阪ガス(株)再生可能エネルギー開発部上田 芳彦

入社後3年間は天然ガス火力発電所に勤務し、その後、電力事業推進部に異動。発電に関するビジネス全般について学び、2018年から現在の部署へ。Daigasグループの再生可能エネルギー開発業務全般に取り組んでいる。

Daigasグループの「2050年脱炭素社会実現」に向けた挑戦
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