未来への挑戦者たち

24.09.30

大阪ガス発、世界初!独自の技術で
食の未来に変革を!大阪ガスのバイオガス技術が生み出した「天然由来ケトン体」で、世界へ挑む

取材・執筆:Daigas STUDIO 編集部

大阪ガス(株)エネルギー技術研究所 
フェロー

坪田つぼた じゅん(左)

大阪ガス(株)未来価値実現部 
技術マーケティングチーム

和田わだ高明 たかあき(右)

幅広い領域での技術開発に挑戦し、社会課題の解決を目指すDaigasグループ。長年培われてきたバイオガス技術から意外な技術が生まれ、新たな事業としての可能性が広がっている。それは、近年話題となった「ケトジェニックダイエット」で関心が高まる健康食品素材ケトン体。その新たな市場を拓こうとする二人の挑戦者たちのストーリーは、未来への大きな夢と希望に満ちあふれている。

CHAPTER

01

独自の発酵技術を活かして、
世界初の技術開発へ挑戦

1980年代よりバイオ分野の研究開発に取り組んできた大阪ガス・エネルギー技術研究所では、バイオプラスチック原料の製造技術検討からスピンアウトしたケトン体の発酵製造の可能性に着目していた。ケトン体とは、人間の体内では脂肪分から生じるエネルギー源で、糖分が不足した場合にエネルギーとして使用される。その機能を利用し、体内の糖分を減らすことで脂肪分からのエネルギー生成を促し、体脂肪を減らす「ケトジェニックダイエット」がアメリカでは人気で、ケトン体を含むサプリメントも広く流通している。しかしそれは化学合成によるもので、日本では販売されていなかった。ところが2013年、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)が、ハロモナス菌のケトン体生成機能を発見したのだ。
「ハロモナス菌の発酵によって作られる天然由来のケトン体ならより安全に摂取できるため、社会の大きなニーズが期待できます。そして私自身、研究者として常に『世の中にないものを生み出し、社会に役立てること』を目指しており、天然由来ケトン体の研究へ力を入れることになりました」(坪田)。
大阪ガスにおけるバイオ分野の研究開発を牽引してきた坪田潤は、産総研と共同で「天然由来ケトン体」の研究を開始。事業化を目指して、世界初の技術開発へ大きな一歩を踏み出した。

CHAPTER

02

事業化へ、品質を高めて低コスト化を目指す!

事業化を見すえて果たすべきミッションは、「天然由来ケトン体」の品質を安定させ、量産体制を確立すること。
「製品として、お客さまが安心して摂取できるよう安全な品質に仕上げなければなりません。そして誰もが手に入れられる価格で販売するために、量産体制を確立して低コストをとことん追求する必要がありました。50mLの試験管から50kLのタンクへ、ケトン体の品質を変えずに100万倍ものスケールアップを実現するには、容器の大きさに対して温度やかき混ぜる速度・回数の最適解を導き出すのですが、研究所内の設備では足りず、外部の発酵設備を使って実験しなければなりません。それは国内のみにとどまらず、アジアやヨーロッパの国々にまで及びましたが、私たちはあきらめませんでした」(坪田)。
数え切れない試行錯誤が実を結び、世界初となる「天然由来ケトン体」の量産体制が確立されたのは、2019年のことだった。

事業化へ、品質を高めて低コスト化を目指す!

CHAPTER

03

技術開発から市場開拓へ、新たなフェーズへ

大阪ガスが開発した「天然由来ケトン体」は、内臓脂肪の減少、睡眠改善、運動機能向上の効果が試験で確認され、「OKETOA®」という製品名でサプリメントに採用されているが、市場開拓はまだ始まったばかりだ。今年からはマーケティングを強化するべく新たなメンバーも加わった。研究者としての経験を活かし、新規事業への挑戦を期して大阪ガスへ入社した和田高明だ。
「私はもともと研究者で『良いものを作っても売れない』というもどかしさを経験しているので、坪田さんをはじめとする研究者の方々をリスペクトし、素晴らしい技術をしっかりと理解して売れる仕掛けを、新しい市場を作っていきたいと考えています。現在は食品関係の展示会への出展や、ホームページを開設して情報発信しつつ、認知度を高めるために新聞などのメディアを活用したパブリシティも積極的に行っています。さらに、お客さまが何を求めているのかを情報収集し、それを研究サイドに還元しながら、次なる戦略を練っています」(和田)。

開発背景

CHAPTER

04

「人に不可欠な優れたエネルギー」として、
海外市場も視野に

「人に不可欠な優れたエネルギー」として、海外市場も視野に

天然由来ケトン体OKETOA®は大きな可能性を秘めている。「10年以上もこの研究開発を続けてきたのは『人の健康寿命を延ばすこと』に貢献する可能性があるからです。私たちは天然由来ケトン体を糖質より優れたエネルギーであると認識していて、これが将来的に人には欠かせないものになると考えています。そのためにはさまざまな食品に使用され、多くのお客さまに摂取していただけるよう価格を下げる必要があり、現在もさらなるコストダウンを目指して研究を続けています」(坪田)。
また海外での市場開拓も視野に入れている。
「すでに年間1,000t規模でケトン体が流通しているアメリカにもビジネスチャンスはあると見ています。アメリカのケトン体は化学合成されたものなので、より安全な天然由来のOKETOA®の価値を理解してもらえると考えています」(和田)。
さらに、これまでのバイオ分野の研究開発が認められ、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「バイオものづくり革命推進事業」に大阪ガスが参加することとなった。地域や事業領域という枠を超えて、さらなる進化への挑戦が続いていく。
「私たちは地域に根差した事業者だからこそ、未来へ投資する姿勢を見せることが大事です。天然由来ケトン体のような人に良いものを社会のために根付かせていくことは、Daigasグループのようなインフラを担う会社がやるべきことだと思います」(和田)。
和田がそう語るように、進取の気性で技術革新をもたらし、よりよい社会づくりに貢献することこそが、Daigasグループの目指すべき姿である。

未来への挑戦

私にとっての挑戦とは

世界中の誰もができない壁を最初に突破すること(坪田)
ワクワクすること。今この瞬間の時間をかけても将来十分な見返りが得られる意義のあるもの(和田)

坪田 潤

1991年入社。エネルギー技術研究所でバイオガス関連の研究開発を行い博士号取得。2006年からビジネス開発部でバイオガスの営業案件に携わったのち、2013年からエネルギー技術研究所でBHB発酵製造技術開発に従事。

和田 高明

2024年入社。2011年に新卒入社した化学メーカーで研究員として国プロ参画、海外メーカーとの共同開発等を経験。2020年から2年間素材・化学系ベンチャーキャピタルに出向し、スタートアップ投資及び経営支援に従事。入社後は、事業創造本部にて新規事業の戦略立案及び実行を担当。

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