フードサイエンスラボ ~第5号~
第3回 EPA、DHAは焼き魚とフライ
ではどちらが多く残るのか?
FOOD SCIENCE LABORATORY
フードサイエンスラボ
第5号
研究事例
EPA、DHAは焼き魚とフライではどちらが多く残るのか?
青魚には豊富なEPAとDHAが存在。調理で減少か?
右表に示す通り、EPAとDHAはサンマのような青魚に多く含まれます。しかしこれらは熱的に安定ではなく、室温でも分解し、分解量は温度上昇と共に増加します。調理の高温にさらされることで、EPAとDHAを減少させるとの報告があります。
それでは、焼き魚やフライにすることで、どの程度、減少するのでしょうか?また、そのメカニズムはどのようなものでしょうか?実験により、調べました。
検証実験を実施。焼き魚の方が保持率が高い!?
北海道産サンマを用いて「焼き」と「フライ」の調理法で、サンマの中心温度(中心部の最も低い温度)が約85℃になるまで加熱しました。
焼き魚ではコンログリル(強火)を用いました。加熱開始直後のグリル庫内では、サンマから多量の水蒸気が出ています(右図上)。フライでは、コンロで油温を200℃に設定し、ホルダーで動きを制約したサンマを油中に投入しました。多量の水蒸気が油中に出て、油面が揺らいでいます(右図下)。
化学分析の結果、保持率は、焼きの場合、EPAで約88%、DHAでは約85%でした。一方、フライの場合、それぞれ約49%(EPA)、約55%(DHA)でした(右図参照)。明らかに、焼き魚のほうが、EPA、DHAの保持率が高いことがわかりました。
フライの方が調理時間は短い。
強い加熱になっている理由は?
フライ時の油の温度(200℃)はグリル中の庫内温度(350℃)よりはるかに低いのですが、フライ時は約2分早く調理が終了します。
何故でしょうか?
熱の伝わり方から、その理由を考えてみました。
グリル庫内で食品は、輻射と対流により強く加熱されますが、食品中の水分蒸発に伴う気化熱により冷却されます。したがって水分がある限り、食材内部の温度は100℃以下になります。
一方、フライでは、液体による強い対流による加熱で、魚の表面温度は瞬時に200℃に到達します。
これらのことから、フライ油温度がグリル庫内温度より低いにもかかわらず、フライ時の方が強い加熱であることがわかります。
EPAとDHAの減少原因は?
フライ時の強すぎる加熱
グリル時のEPA、DHAの損失はそれぞれ約12%、15%であり、その主要因は脂の飛散であることが、受け皿に飛散した脂重量から分かっています。
フライでの大きな損失は油内への飛散と、熱分解・酸化が原因だと考えられます。EPAやDHAは魚の体の外側(皮付近、赤身肉)に多いことから、これらの部位が強く加熱されたため、熱分解や酸化が生じたと考えられます。
それではフライの時、EPA、DHAの保持率を上げるにはどのようにすればいいのでしょうか?強すぎる加熱を弱めるための方法として、油温の低温化や表面につける卵、パン粉の増量等が考えられます。
今後、それらの効果や、おいしさとの関係を含めて、研究を進めたいと思っています。
フードサイエンスラボでの
インターンを終えて
-
ジョン・ヘンダーソン
ブリティッシュ・コロンビア大学
機械工学専攻(カナダ)
インターンシップでは、日本の生活を本当に楽しむことができ、様々な経験ができたことに、心から満足しています。日本人と日本文化から多くのことを学びました。これらは、今後の私の学業とキャリア形成に大変役立つと思っています。日本の生活で感じたことがいくつかあります。
一つには、他文化に触れることが貴重な経験であることです。特に日本ほど、自分の視野や考えを広げてくれる場所はありません。日本には、均質で、強く、豊富な、多彩な文化があり、特有の言語もあります。文化に適応するのは、簡単ではありません。
しかし一方で海外の人を歓迎してくれる雰囲気があり、交通や通信などのインフラの点も整っているので、本当に住みやすい国だと思いました。
二つ目には、日本の社会、文化の特殊性です。たとえば、北米の個人主義と比較すると、日本はグループを重視する特質があります。私自身の考えですが、この特質は、この国の高度な安全やセキュリティという日本文化のポジティブな面を作り上げるのに貢献したのだと思っています。
その他、たとえば毎食事の前に「いただきます」と言う習慣は、日常生活における、高度な尊敬と謙遜の文化から生まれていると思います。
日本での生活は本当に良いものだったし、その機会を与えられたことに感謝しています。たくさんの良い思い出を持ち帰ります。
そしていつかまた日本に帰ってきたいと思っています。
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知的財産状況
- グループ会社の技術
- 株式会社 KRI 大阪ガスケミカルグループ オージス総研グループ
-
不正解
答えはBの焼き魚
検証実験を実施。焼き魚の方が保持率が高い!?
北海道産サンマを用いて「焼き」と「フライ」の調理法で、サンマの中心温度(中心部の最も低い温度)が約85℃になるまで加熱しました。
焼き魚ではコンログリル(強火)を用いました。加熱開始直後のグリル庫内では、サンマから多量の水蒸気が出ています(右図上)。フライでは、コンロで油温を200℃に設定し、ホルダーで動きを制約したサンマを油中に投入しました。多量の水蒸気が油中に出て、油面が揺らいでいます(右図下)。
EPAとDHA保持率の比較化学分析の結果、保持率は、焼きの場合、EPAで約88%、DHAでは約85%でした。一方、フライの場合、それぞれ約49%(EPA)、約55%(DHA)でした(右図参照)。明らかに、焼き魚のほうが、EPA、DHAの保持率が高いことがわかりました。
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正解
答えはBの焼き魚
検証実験を実施。焼き魚の方が保持率が高い!?
北海道産サンマを用いて「焼き」と「フライ」の調理法で、サンマの中心温度(中心部の最も低い温度)が約85℃になるまで加熱しました。
焼き魚ではコンログリル(強火)を用いました。加熱開始直後のグリル庫内では、サンマから多量の水蒸気が出ています(右図上)。フライでは、コンロで油温を200℃に設定し、ホルダーで動きを制約したサンマを油中に投入しました。多量の水蒸気が油中に出て、油面が揺らいでいます(右図下)。
EPAとDHA保持率の比較化学分析の結果、保持率は、焼きの場合、EPAで約88%、DHAでは約85%でした。一方、フライの場合、それぞれ約49%(EPA)、約55%(DHA)でした(右図参照)。明らかに、焼き魚のほうが、EPA、DHAの保持率が高いことがわかりました。