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材料開発

低コストで分散性の高い多層グラフェン

概要

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 シート状のナノカーボンであるグラフェンは、熱伝導性、潤滑性、強度、電磁波吸収性、電気伝導性など多彩な特性を有すると言われていますが、長時間かけて少量ずつ作製することが多く、低コストで簡易な製法が望まれていました。
 大阪ガスでは、黒鉛を水中で一段階で剥離することにより、化学的な変化を加えることなく、多層グラフェンを簡易に作製することに成功しました。

薄い二次元形状である多層グラフェン(TEM画像)


多層グラフェンの製法と特徴

黒鉛を水中で剥離し、一段階で作成するため、簡易かつグラフェン構造を損ないません。


また、①水系塗料などに分散しやすい水分散液、もしくは②樹脂、ゴム、オイル、溶媒、水に分散しやすいパウダーで供給することができます。


図1. 多層グラフェンの製法と特徴

作製した多層グラフェン

厚さ1~数10nmと非常に薄い材料です。

このため、少ない重量で多くの枚数を添加し、ナノカーボン特有の高い物性を付与することができます。


特に下記の物性に特徴を有します。

1)熱伝導性・放熱性:高い熱伝導率と輻射率で、熱を素早く伝え、放熱します。

2)潤滑性:少ない添加量で摩擦・摩耗を低減します。

3)強度:熱可塑性樹脂、ゴムから無機物まで、様々な材料の強度を向上させます。

4)電磁波吸収:電磁波を反射せず吸収することも可能です。



図2. 多層グラフェンの電子顕微鏡写真(SEM/STEM/TEM)

多層グラフェンの各特徴

【1.熱伝導性・放熱性】 

・極めて高い熱伝導性を有し、熱伝導率を数10~数100倍に向上することも可能です。
・輻射により放熱性が向上します。
・分散性が良いため樹脂の強度や塗料の塗布性を維持します。


図3.多層グラフェン50wt%添加時のエポキシ樹脂の熱伝導率


図4.多層グラフェンの添加量と熱伝導率



図5.アルミナ50wt%系への多層グラフェンの添加効果


図6.多層グラフェンの輻射による放熱効果



図7.熱伝導と輻射による放熱効果

【2.潤滑性(摩擦・摩耗低減)】 


少量の添加で摩擦・摩耗を低減します。



図8.グリース添加時の摩擦力



図9.グリース添加時の摩耗量



図10.オイル添加時の摩擦係数(SRV:振動摩擦摩耗試験)



図11.オイル添加時の摩耗量(シェル四球試験:WEAR)



図12.エラストマーの摩擦抵抗試験



図13.エラストマーの摩耗量比較

【3.強度(樹脂・ゴムの強化)】 


・少量の添加で、強度・弾性率を向上します。

・伸び・衝撃強度・引裂強度を損ないにくいです。

・硬度や耐摩耗性を改善します。



図14.エラストマー添加時の引張強度試験(イメージ)



図15.SBR少量添加時の引張初期応力

【4.電磁波吸収特性】 

・電磁波を吸収することも反射することも可能です。
・塗料への添加、樹脂への添加、不織布や紙へのスプレー・含浸など用途に合った使用方法が選択できます。


図16.電磁波吸収特性

供給形態と使用形態

熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂に分散するだけではなく、塗料への添加、繊維への吸着、オイルやグリースへの添加も可能です。

特に水系塗料には、水分散液が使用でき、分散にかかる手間が軽減される可能性があります。

エネルギー技術研究所では、複合材料、エネルギー分野など使用形態に合った多層グラフェンを開発するとともに量産化を進め、省エネ、CO2排出削減、安全性・耐久性向上に寄与していきます。



図17.供給形態と使用形態



図18.既存塗料への添加例


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