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フードサイエンス

食品工場の製造工程IoT化技術の開発

概要

食材評価技術、センシング技術を用いて、食品製造工場のお客さまの製造工程IoT化をサポートする技術を開発しています。


背景

 食品製造業界では、ベテラン職人の高齢化や労働人口の減少、食品の安全性への要求の高まりなどから、その技能の伝承および安定的な品質確保・向上が大きな課題であると言われています。

 これらの課題を解決する手段として、近年、工場のInternet of Things(IoT)化に対するニーズが高まっており、当社ではお客さまの工場全体の運用を支援するIoTサービス「D-Fire®」*を食品・金属・化学工場などに広く展開しています。

 本テーマでは、食品製造工場のお客さまに対し、エネルギー技術研究所の保有する食材評価技術、センシング技術で継続的な高品質な食品製造を支援することを目的とし、さまざまな食品センシング技術の開発を行なっています。


*リンク:https://ene.osakagas.co.jp/product/dfire/index.html

研究例

 具体例として、日本酒の製造工程IoT化の取り組みについて紹介します。日本酒の製造工程は”原料米処理工程”と”酒造り工程”の大きく二つに分かれており、前者は主に熟練者(杜氏)の経験と感覚で工程が管理されており、後者は成分分析データで管理されることが多いと言われております。

 それぞれに対しセンシング技術を用いて”原料米処理工程の杜氏判断サポート(感覚の数値化による)”ならびに”酒造り工程の高度管理”を行なう酒造工程IoT化技術を開発しています。


項目2_日本酒の製造工程

センシング事例

日本酒の各製造工程に対し、独自のセンシング技術を開発しています。


浸漬工程

吟醸酒や大吟醸酒などでは、米に適度に水を吸わせます(限定吸水*1)。米の吸水度合いの”目視”などでの判断に対し、カメラを用いた”画像解析・認識”により吸水度合いを評価します。


蒸米工程

浸漬した米を蒸して糊化*2させて発酵時に分解されやすくします。蒸した米(蒸米)を”触感や目視”などでの判断に対し、”近赤外分光を用いた成分分析”により蒸し度合いを評価します。


製麹工程

蒸米に麹菌*3を繁殖させて澱粉分解酵素を産出します。麹が繁殖した米(麹米)を”におい・味”などでの判断に対し、”ガスセンシング”により麹菌の成長度合いを評価します。


老化工程

蒸した米の発酵中での分解しやすさを制御するために老化*4させます。老化した米(掛米)を”触感”などでの判断に対し、”画像解析”により老化進行度合いを評価します。


発酵工程

麹米と掛米、酵母を合わせて澱粉の分解、アルコールの生成を行ないます。澱粉の分解状況やアルコールの生成状況を”化学分析”するのに対し、”近赤外分光を用いた成分分析”により瞬時に成分を評価します。


*1 限定吸水:食用の米に比べて酒用の米は水を吸うスピードが速く、かつ適度に吸水させる必要があるため、水に漬ける作業においては、ストップウォッチにより分秒単位で時間を管理しています。

*2 糊化:米に水がある状態で加熱して澱粉の結晶構造を変えることを糊化といいます。食用米では糊化することでヒトが消化可能になり、酒米では酵素が澱粉を分解可能になります。

*3 麹菌:糊化した米を分解して糖に変える菌です。

*4 老化:糊化とは逆に、保管・冷却・乾燥などにより、澱粉の結晶構造が変わり、酵素により分解がしにくくなる現象です。

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